映画 「黒い罠」「つばさ」など~戸川利郎

【1995年】

『パルプ・フィクション』(アミューズ)や『ジェロニモ』(ソニー)が発売、ロバート・デニーロ初監督作品『ブロンクス物語』(東宝)はレンタルのみの登場だが、1994年の話題作が早くもレンタル店にひしめく。借りるほうが安く、保存場所もいらない利点はあるが、いまやビデオは"借りる"から"買う"時代に変わりつつある。

オーソン・ウェルズ監督・脚本・主演の『黒い罠』(CICビクター)は、メキシコの麻薬捜査官チャールトン・ヘストンが新妻ジャネット・リーと新婚旅行先で事件に巻き込まれ、アメリカの悪徳警官と対決するサスペンス。冒頭の3分20秒に及ぶ長回し撮影が有名。1958年の初公開時は95分だったが、これは108分の完全版である。

ビリー・ワイルダー監督がハリウッドの内幕を描いた『サンセット大通り』(CICビクター)も古典的名作である。プールに浮かぶ死体となった若い脚本家ウィリアム・ホールデンが、自分がなぜ殺されたかを語る構成で、彼に再起の夢と愛を託した老女優役のグロリア・スワンソンがすごい。1950年作品。

『つばさ』(アイ・ヴィー・シー)は第1回アカデミー賞の作品賞を得たウィリアム・A・ウェルマン監督の壮大な空中戦映画。クララ・ボウ、チャールズ・ロジャース、ゲイリー・クーパー主演。リンドバーグが大西洋横断飛行に成功した直後の1927年作品で大ヒットした。『素晴らしきヒコーキ野郎』や『ロケッティア』と比較して見るのも一興か。

日本映画では『大殺陣雄呂血』(大映)がお勧め。サイレントの名作のリメークで、市川雷蔵主演、田中徳三監督。ラストの大捕物はチャンバラ映画のだいご味を再現している。なお、原典の阪妻版も活弁入りのビデオがある(マツダ映画社)。

田中登監督の『人妻集団暴行致死事件』(にっかつ)はいわゆるロマンポルノではなく一般映画として製作された。性の問題を社会派ふうに描いた青春映画の佳作だ。

東宝のレーザー・ディスク"ごくらく座"シリーズの『お嫁においで』(東宝)も注目したい。加山雄三の主題歌が売り物だが、『ゴジラ』の本多猪四郎監督の別の一面を伝える海の青春映画である。

戸川利郎