群馬・伊香保森林公園(深津紘二朗、1989年)

「群馬・伊香保(いかほ)森林公園」について

(深津紘二朗、1989年)

葉がすっかり落ちた木々の間を縫うようにして続く遊歩道を歩いてみました。標高は1000メートル。地面はコチコチにいてついて歩きにくいです。榛名山二ツ岳(はるなさんふたつだけ)の山ふところに広がる群馬県立伊香保森林公園は静かな冬の眠りについていました。

公園は昭和54年の開設です。伊香保温泉と榛名湖の中間、二ツ岳を中心に、224ヘクタールの面積を持っています。ほとんど天然林です。ミズナラ、ダケカンバ、ミズキ、ツツジが植生を分け合うように群生し、緑のシーズンには、遊歩道を暗くするほど葉が茂ります。

開設当初からの管理人さんは「夏は別天地。それに比べて冬はお勧めのしようがない。一番いい季節に案内出来ないのが残念です」と話してくれました。

年間来園者は10万人を数えます。中でも東京都の墨田区と板橋区では、学校行事として毎年、児童生徒を送り込み、自然学習教室を開いています。

つつじが丘展望台まで来ると視界が開けます。赤城山、子持山、遠くに日光連山が望め、ふもとに渋川市街地が広がります。さらに歩道を行くとツツジの群落が歩道を覆うように枝を伸ばしていました。「5、6月、ここは赤い花のトンネルになるんです」と管理人さん。つづじが峰という名もうなずけます。

野鳥が多くいました。昨年、日本野鳥の会が定点観測所を設けました。ここでは野鳥が人を恐れず、観測が容易に出来るからだといいます。野鳥が安心して住める自然環境にあるあかしです。1年ほど前、管理人さんは、園内にひそかに張られていた野鳥密猟の網があるのを見つけています。「不心得な人はいるが、野鳥の通り道は私がよく知っている。これからも野鳥を守り続けたい」と話していました。

JR渋川駅から伊香保温泉までバス40分、さらにロープウエーで。または同温泉からバス20分で公園口下車。近くには伊香保ハイランドスケートセンターがあります。